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2015.06.17

クロッキー

いきなりですが。絵は別に手だけで描くものではありません。

絵というものは、眼と脳と手、すべて使わなければなりません。

眼で見て、脳で捉えて、手で覚えるのですが、この一連の作業の練習に良いのが「クロッキー」というものです。

「クロッキー」とは「速写」というもので、言葉のとおり「速く描く」練習法です。
デッサンが一枚の絵を数時間かけて、じっくり立体感や質感をつけて仕上げるのに対し、クロッキーは数分から数秒で描きます。
当然じっくり描いてなんかいられません。立体感もつけられません。
一瞬で見て、把握して、描く、これをすごいスピードでこなす練習がクロッキーです。

クロッキーはとても簡単です。
まず大きめのクロッキー帳(ぺらぺらの安いやつでOK)と2Bくらいの濃い鉛筆か、マジックを用意します。消しゴムは要りません。
友達でも家族でもいいので、モデルをお願いしましょう。
最初は15分くらいのタイマーをセットし、15分でモデルを描きます。このとき、頭からじっくり描いていくのでは間に合いません。
顔や指などの細部も後回しです。とにかく、全身の構造をぱっと見てとらえて、全体を描くことを重視してください。
消しゴムは使いません。一発勝負です。
それを、10分、7分、5分と短くしてゆきます。最終的には1分〜30秒単位でどんどん友達にポーズを変えてもらい、すごいスピードで描き殴ってゆくのです。
ものすごい集中力がいります。これが眼と脳と手を鍛えます。

なお、モデルになってくれる人がいない場合、スポーツ番組の録画を一時停止してスポーツ選手をモデルに描くような人もいるようです。一時停止せずに動く選手をそのまま描く人もいます。私はできませんが・・・。
ネットではポーズマニアックスのようなページもあります。

が、私はできれば実際の人間を描くのが一番いいと思います。
やっぱりいくら立体的でも、画面は画面、二次元なんです。
私もポーズマニアックスを見て練習したことがありますが、どうしても、何か空間が掴みきれない、もどかしさのようなものを感じました。
人間は三次元の世界で生きています。三次元の人間を見て描く方が空間把握の力がつくと思います。

クロッキーは漫画には有効な練習方法だと思います。モデルになってくれた友達にはアイスでも奢っておきましょう。漫画家志望仲間なら交代でやりましょう。

そして、クロッキーをやりながら、うまくかけなかった、なんかごまかしちゃった、どうなってるかわからなかった部分について、人体の本で調べておきましょう。
ここはこういう関節だからこうなったのか、とか、ここにこういう骨があるから、ここがでっぱっていたのか、ということですね。
あとから「おさらい」として、そこだけじっくり納得ゆくまで描いてみてもいいと思います。クロッキーではなくデッサンに立ち返ってもいいでしょう。

※実際にやってみたのが、こちらの記事。


追記:目クロッキー

さて、上記のとおりとても素敵な練習方法、クロッキーですが、いくら手軽にできるとはいえ、本当にいつでもどこでもやるわけには行きません。

授業中や仕事中にクロッキー帳を取り出すわけにもいきませんし、電車や街中でいきなり他人を描き出したら、勝手にモデルにされた人とトラブルになることもあるかもしれません。
でも、街中や電車で人を見ていたら、クロッキーしたいと思うことが多いと思います。(たまに本当にやっている人もいますが…)

そんなときにオススメなのが目クロッキーです。
やり方は簡単というかそのままですが、目で見ながら、脳内だけでクロッキーをやるのです。仮想クロッキーです。
これだけでも、上記の「目で視て、脳で捉えて、手で描く」うち、手で描く以外の部分を鍛えることができます。
できれば、あとで絵を描ける状況になったら、記憶を頼りに紙に描いてみるといいでしょう。

記憶は繰り返し思い出すことで定着しますので、目で視て、脳内で捉えて描き、さらにあとで手で紙に描くことによって、より確実に蓄積されると思います。
これで、いつでもどこでも、クロッキーし放題です。

ただし、特に男性は、不審者に間違われないようにだけ注意してください。女性や子供を凝視していると、よからぬ誤解を受けることもあるかもしれませんから・・・。


■クロッキー本のおすすめ

クロッキーはデッサンほど本が出ているわけではありませんが、こういう本があったので購入してみました。


この本の何が気に入って買ったかというと、
・漫画用のクロッキー本である
美術ではなく、漫画を前提としているので使いやすい

・曲線で描くことを徹底していて、人物の動きが固くなる人に向いている
中を見ればわかるんですが、この本の目的はとにかく「曲線で描くこと」
それだけに特化してるんじゃってくらいです。
なので、細かいクロッキーのやり方とか、体のバランスのとり方とかを知りたい人には向かないかもしれません。
私は線や動きが固くなると昔から言われ続けているので、そういう人には見ているだけでなんとなく、やわらかく描く感じが感覚的にわかってゆくので、良いと思います。


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Posted at 20:45 | クロッキー | TB(0) |
2012.04.08

トレスってみる

さて、漫画を描く順番としてはストーリーが先なのですが、皆さんが練習するときはやっぱり絵の練習から入る方が多いと思いますので、先に絵の練習方法について説明します。

とりあえず、今までそういった絵を描いたことがほとんどなく、どこから手をつけていいのかわからない方は「トレス」から始めてください。

トレスとは「写し書き」「なぞり書き」のことで、すでにある絵に、うすい紙を載せて、上からなぞって描く練習法です。
ビニールなどでも、とにかく下の絵を透かしながら写し書きできるような紙ならなんでもいいです。

好きな漫画家さんやイラストレーターさんの絵をトレスして、「絵を描く」ということに慣れるまでやってみましょう。

ただ、この練習方法ばかりやるのはおすすめしません。

これはあくまで人が描いたものをなぞっているだけ、自分で描いていることにはなりませんので、こればかりやっても自分自身の画力はあまり上がらないからです。
ある程度「描く」という作業になれてきたなと感じたら、次の模写に練習方法を変更してみましょう。

なお、トレスした絵を「自分で描いた絵」としてネット上に載せたり、どこかに応募してはいけませんよ。
著作権違反となります。


Posted at 21:20 | トレス | TB(0) |
2012.04.07

模写ってみる

模写は、トレスと違ってなぞりがきではなく、「見ながら描く」ことです。

好きな漫画家さんの絵を横に置いて、見ながらそっくり同じに描いてみましょう。
これはトレスと違い、なかなか難しいと思います。
1コマ描くのに、何時間もかかるかもしれません。
なかなかうまく描けなくていらいらするかもしれません。

でもくじけずにやってみてください。

大学ノート3〜5冊くらい、びっちり両面埋まるほどに模写しまくると、けっこう上達していると思います。
それくらいになると、だんだん漫画などを見なくても、自力で絵を描けるようになってきているのではないでしょうか。

なお、最初は好きなシーンだけとか、顔だけとか、そういうやりやすいところからやってゆけばいいと思いますが、本気で画力向上していきたいなら、1P丸々全部模写するという練習方法がおすすめです。人物だけではなく、背景なども全部描きます。
せりふやスクリーントーンまで手書きで再現しなくてもいいですが・・・。

漫画を一作描いてみればすごくわかることですが、漫画は顔やバストショットだけ描ければいいというわけではなく、全身、いろいろな角度、いろいろなポーズ、老若男女、動物、背景、いろいろ描けなければならないからです。


なお、この時点では「やりすぎるとこの作家さんに絵が似すぎちゃう」「自分のオリジナリティがなくなる」といったことは一切心配しなくていいです。

そういうことはデビュー後に心配をしても充分間に合います。
たまに志望者の人で、「○○先生に似すぎていませんか?パクリだと思われたらどうしよう」と心配している人がいますが、二つの意味で心配いりません。

一つは、「既存作家に絵柄が似てる」というのは新人漫画家では当たり前のことなので、編集部ではほとんど問題にしません。
どんな個性的な作家も最初は誰かの模倣から始まったのです。プロとしてやってゆくうちに個性は出ますので、心配いりません。
ただ、デビューするくらいのレベルで、特定の作家と区別がつかないレベルで似ていると、編集部から注意を受けることがあります。でもそれも、「似てる」という理由でデビューできないとか、そこまでの問題になることはほとんどありません。
なので、実際に編集部から注意されてからなおすくらいで大丈夫です。

二つめには、志望者のほとんどはプロ作家より思いっきりヘタクソなので、本人が思うほど似ていません。ぶっちゃけ、この画力で「似てる」なんて言ったら作家に失礼だろ、という苦笑モノのレベルであることが多いです。
上手になってゆく段階で、いろんな作家の影響を受けていきますので、編集部に注意されるレベルまで特定の作家に似たまんま、という志望者は多くはないです。

というわけで、そのへんは気にせずに、どんどん模写していきましょう。
あと模写もトレスと同じく、自分で描いた絵として発表すると著作権侵害ですのでご注意ください。


Posted at 21:33 | 模写 | TB(0) |
2012.04.06

デッサン

漫画絵を描いていると、「デッサンをした方がよい」という意見をやたらと聞くことになると思います。
それは間違っていないのですが、漫画絵とデッサンは微妙に距離があるので、やたらとやればいいというものでもないと思っています。

まず、「デッサン」とは美術における「素描」のことで、色を塗らず鉛筆や木炭でモチーフを描くことを言います。人間に限らず、動植物や静物などのデッサンも多いです。
美大や芸大の入学試験には必ずこの「デッサン」が含まれます。美術の基礎となるものです。

が、漫画で使われる「デッサン」という言葉は、美術で言うデッサンと若干違う意味合いで使われることが多いです。
まず、漫画で言う「デッサン」は100%「人物デッサン」のことを指します
さらに言うと、「人体の構造」「人体のバランス」というような意味合いで使われることが多いです
「デッサンが狂ってるので、もっとデッサンを勉強してください」というようなことを言われた場合には「人体のバランスがおかしいので、もっと人体の構造を勉強して把握し、バランスがとれた状態で描けるように練習してください」という意味なわけです。


漫画では人体についても、他の物についても、「構造を正しく理解し、不自然でない程度にバランスよく描ける」ことが重要ですので、そこについての勉強は必要です。
ただ、いきなり「構造を理解し」なんて言われて、分厚い美術書を買ってきて開いても、骨やら筋肉やら、妙にリアルなおばちゃんの木炭デッサンやら載っているだけで、それを見てどうしていいかわからないと思います。
美術書は高いですしね。いきなりとりあえず買うのはすすめません。

では、どういう感じでデッサンを学んでいけばいいかというと、私は以下のような感じかなと思います。


1.まずは、好きなように楽しく描く

この記事で書いたように漫画の模写などから始まって、楽しく漫画のお絵描きをするところから始めてゆくとよいです。
もちろん、模写だけじゃなくて、オリジナルのイラストや漫画も描いていきましょう。

でも、ある程度描きなれてゆくと、上述の「人体の構造」について勉強してゆかないと、ちょっと難しいポーズになると描けないことに気がつくと思います。
ここの関節がどうなっているかわからない、ここが不自然な気がするけど、どうしてなのかわからない・・・。

そうなったときに、初めて「人体の構造」について調べてみる、という感じでいいと思います。



2.自分の身体を調べてみる

人体の一番のモデルは自分です。自分の体をよく見て調べるところから始めましょう。
鏡に映して、わからないところをよく見てみる。動かしてみる。さらには触って骨や筋肉がどうなっているのか感じてみる。
デジカメや携帯で写真をとって、モデルにしてみる。



3.プロの表現を参考にする

そして、好きな漫画家やイラストレーターが、身体をどう描いているのか、もう一度じっくり見てみましょう。模写をやってもいいと思います。
難しい肩や腰の動き、腕や足の関節、手や足の指。
なんとなく見ているだけでは気がつかなかった、いろいろなところにこだわりや工夫があるのがわかると思います。微妙なバランス、線の強弱。

漫画やイラストではデフォルメされていますので、必ずしも正しいデッサンで描かれているわけではありませんが、「このように描くことで、それらしく見えるんだ」ということを学ぶことができると思います。


それでもやっぱりよくわからない。ちゃんと骨や筋肉がどうなっているのか知りたい。そうなったら次です。



4.デッサンの本などで勉強してみる

ここでようやくデッサン教本などの出番です。
しかし、ここでもいきなり高い本を買うことはありません。(お金もちは買ってもいいですよ)
お金のない学生さんなどは、学校でも市立図書館でも本屋でもいいので、「デッサン入門」「人体デッサン」みたいな本を探してみましょう。意外とおいてありますよ。デッサン方法なんて新旧でたいして変わらないので、かなり古い本でも大丈夫です。

また、「人体の構造を把握する」が目的ですので、デッサンのやり方を説明している本より、人体の構造についてわかりやすく説明してある本がいいと思います。医学専門書が役に立ったという話も聞いたことがあります。
そうして、自分が「ここがわからない、知りたい」と思うようなことが載っているか調べ、わかりやすく載っている本があれば、お金がない人は借りるところから、お金持ちは買いましょう。

なんでもそうですが「練習」や「勉強」は、それ自体をするためにするものではなく、「目的」を果たすためにするものです。
なので、自分が「上手になるために、これが必要なんだ」という「目的」を自分で発見してからやるのが良いと思います。
人に勉強しろ、練習しろ、と言われて、わけもわからずやってみたところで、自分でその必要性が本当にわかっていなければ、続かないし身につきません。

たまに、質問サイトなどで、練習方法や量ばかりにこだわる人がいます。方法や量はもちろん大切ですが、そこばかりにこだわると練習すること自体が目的になってしまいます。
また「これだけやってれば間違いない」「これが正しい方法」というものはありません。人によって違うからです。なので、安易に他人に正解を求めるのはやめて、自分で自分のための正解を探すことを忘れないでください。



漫画絵に必要なデッサン

ところで、ある程度以上の本格的なデッサンは、漫画では必要はないと私は思います。

・漫画での「デッサン力」…主に「人体の形態」を「不自然なく」「線で描く」力」
・美術での「デッサン力」…「モチーフの形態、質感、量感、立体感、臨場感」を「正確に」「タッチで表現する」力」

全然違うわけではないのですが、実はそれほどカブってないのです。

個人的には、パースや構図、形態を正確に捉える力、また後述する「物を見ぬく力」は共通して必要なので、そこまでは基礎として学んで良いと思うのですが、それ以上になってくると美術と漫画は離れてゆくと思います。

漫画は線で形をとるまでが主ですが、美術のデッサンは「線で形をとる」のはあくまで初期手順でしかなく、一番の肝は「タッチで質感・量感・立体感を表現する」ことです。デッサンの勉強をすると、かなりの時間をそこに費やします。…が、漫画ではそこは必要ないとまでは言いませんけど、あまり使うことのない技術です。

一般的な少年少女マンガなら、線・ベタ・トーンでの表現が主で、影など多少タッチが入ることがあっても、タッチを主体にして量感や質感を表現するような画風になることはあまりありません。リアルになりすぎて少年少女漫画には向かないからです。
青年漫画のようなリアルな作風ならたまにあります。「バガボンド」「テルマエロマエ」なんかいい例ですね。あれはデッサンで学ぶようなタッチが入ってます。ああいう作風を目指すなら、デッサンの勉強をしっかりしておいていいでしょう。

やったらやったで、身になることも多いので、やることが悪いとは思いませんが、漫画には他にもやらないといけないことはたくさんあるので、自分の作風にどこまで必要なのかは、よく考えて学んだ方がいいと思います。

私は美術系の大学を受験しているので、予備校でデッサンは学んでいますが、役に立っているなあと感じるのは、漫画というよりカラーイラストです。カラーイラストは立体感の表現が必要になってくるので・・・。
でも漫画家デビューにカラーイラストの技術は不要です。デビュー後は必要になってきますけれど。なのでやっぱり後回しでもいいかなと思います。


「モノを見抜く力」

あと、美術的なデッサンで、漫画に役立つことがあるとしたら、「モノを見ぬく」力がつくことだと思います
デッサンはたかがリンゴ一個を、コーラ瓶一本を、2時間も3時間も、ひたすら見つめて、その物に向き合います。わずかな形のゆがみ、パース、かすかな陰の色の違い、光の当たり方、そういったものを目を凝らして見つめ、何時間もひたすらストイックに鉛筆や木炭の陰影だけで、表現を追い続けるのがデッサンです。

物を「見る」というのは、絵を描く上で、実は相当に重要で基本的な能力です。
誰もが当たり前のようにできることで、実はなかなかできていないことです。

デッサンをガッツリやると、「なんとなく見る」だけではなく、「物に隠された、絵を描くための情報を読み取る」というようなことができるようになります。
その物が、どういった空間に、どういった状態で、どういった形態で、どういった陰影をもって、存在するのかを、把握する。
そして、それを表現するのに、どのように手を動かし紙に表せばいいのか頭の中で組み立てる、そういったテクニックですね。

デッサンがすべての基礎と言われるのはこのためだと思います。
漫画を描くのに直接的にはどこまで役立つかというのは微妙ではあるのですが、長い目で見たとき、絵を描くのに関連した仕事をするならば、やっておいて絶対に損がない練習です。


デッサンを学ぶなら

デッサンだけは完全独学ではなく、できればちゃんとした先生にならった方がいいと思います。
美術用予備校なら間違いなく教えてもらえるでしょうが、それが難しい人は、学校の美術の先生や、町のデッサン教室みたいなところでもいいので、最初の基礎だけでも習うといいでしょう。
こちらの記事にそのへん書きました。

なお、注意点としては、「正しいデッサン」が必ずしも漫画として良い絵になるわけではありません。
漫画では多少デッサンがおかしくても、「魅力的に見える」方が大事です。
ぶっちゃけ、きっちりデッサンをとると、どうしても躍動感や動きは乏しくなりがちで、堅苦しく面白みのない絵になることがあります。
もちろんどう見てもおかしいのは別ですよ。それはおそらく「魅力的に見えない」と思います・・・。


ですので、デッサンの勉強やクロッキーもやりつつ、漫画の模写をやったり、漫画を描いたりして、「漫画の絵」として魅力的にデフォルメ・表現することも忘れないように練習してゆきましょう。


 



Posted at 21:39 | デッサン | TB(0) |
2012.04.05

背景とパース

けっこう苦手な人が多いと思う背景。
背景が得意になるにはどうしたらいいか、背景を描くのを好きになればいいんです。

背景には二つの役割があります。

1.状況説明
主人公が今どこにいるか。
背景の基本的な役割です。

2.臨場感、雰囲気づくり
背景の美しい漫画を読んでみましょう。
ただの「説明」に終わらず、背景が何かを語っているはずです。
漫画ではありませんが、ジブリのアニメ映画を見たことはあるでしょうか。
どの映画も、背景が素晴らしく美しいでしょう。
とうていただの「説明」ではありません。大切な映画の一部です。

背景というと「人物のオマケ」と思ってしまうかもしれません。
でも「ただの説明」「ただのオマケ」と思って描くのも面白くありません。
どうせ描かなければならないものなら、美しい背景、迫力ある背景を目指すのもいいと思います。

ただ、あくまで漫画の一部ですので、漫画としてのバランスは忘れないようにしましょう。

というわけで、そのバランスですが。
まず、全コマに入れてはいけません。画面がごちゃごちゃして非常に見づらくなります。
必要なところにだけ入れましょう。
どういうところが「必要」なのかは、実際の漫画を読んでみるとだいたいつかめると思いますが、少なくとも

1.最初の1P、主人公がどこにいるのか。
2.場面転換の都度


ここは絶対必要です。その後も、少なくとも1Pに1〜2コマはちゃんと背景を入れるようにしましょう。

あと、ただ描けばいいというものではなくて、最初にあげたように「どういった場所にいるのか」がわかるように描かないといけません。
そこが「汚い場所だ」と言いたいなら、汚く描かなければなりませんし、「自然がきれいな場所」なら、きれいな自然をアピールして描かなければなりません。
明るい話なら明るい背景を、暗い話なら暗い雰囲気の背景を描きます。
雰囲気を盛り上げるのも背景の役目なんです。

また、プロの漫画を見ると、俯瞰(上から)全体を描いてあったり、重要な一部分だけを描いてあったり、時間がわかるように描いてあったり(夜なら暗がりに電灯など)、ちゃんとその場で必要な情報を、必要なだけ描いてあると思います。
よく読んで、勉強してみましょう。

パースについては、すみませんが、中学生のときに美術の授業でやった程度の知識しかありません。
まあ、逆を言えばその程度の知識しかなくても、美術系の大学に合格したり、漫画家としてデビューできるということですが。(レベルはさておき)

というわけで、ここは詳細な説明ができないので、各自ぐぐってください。
「遠近法」「透視図法」こういった言葉で検索すれば、詳しい説明のあるページが出てきます。

私からのアドバイス?としては、特に真面目な人に注意ですが、あまりきっちり透視図法どおりに描かないことをおすすめします。
これは「遠近感がおかしくてもいい」ということではありません。
デッサン同様、「正しさ」より「自然である」「魅力的である」方が優先されるということです。

実は、透視図法どおりきっちりと数値を測って背景を描くと、「不自然」になります。
3Dの映画やゲーム。特に最近のものでなく昔のものをやればわかると思います。現実の世界の遠近感とは違いますよね。
今の技術ですら、3Dで作った建造物の映像と、実際の映像とでは違和感があります。

あれはなぜかというと、人間の目が二つあるからなのです。
わずかにずれた位置に二つ目があるので、透視図法でいうところの消失点等もすべてずれて二つ存在します。
人間は無意識にそのズレを調節しながら物を見ています。人間が見ている世界はズレのある世界であって、「正しい透視図法」の世界ではないのです。

ですので、馬鹿正直に定規できっちりと消失点をとり、きっちり計算どおりに透視図法で背景を描くと不自然になります。
そこは、「不自然でない」方を優先して、多少線をずらすなりして、自然に見えるように調整しましょう。

あと、初心者が忘れがちなのが「人体にもパースがある」ということです。
当たり前なんですけど、人体も立体物である以上パースはあります。これを意識しないといくら良い背景を描けても、人物をその背景に上手に乗せられなくなってしまいます。
人物のパースもちゃんと意識するようにしてください。


「魅力的」についてですが、プロの漫画を読んでみればわかると思いますが、必ずしも正しい透視図法で描かれている背景ばかりではありません。(作者の技術不足でおかしなことになっているのは別として・・)
特に多いのは、わざと広角で描かれている背景だと思います。
これは現実どおりに透視図法で描くと、画面がとても狭く見えるからです。
画面に広がりを持たせるために、なんでもない背景でも、わざと広角めで描く漫画家さんは多いです。

また、戦闘シーンなど動きのあるシーンでは、広角とおりこして魚眼レンズを通したようなパースで描いたり、画面に広がりを持たせるために、広角でさらにかなり大げさな三点透視(現実どおりにパースをとると、大げさな三点透視になることはまずないです。)にしてみたりと、画面を魅力的に見せるために、いろいろな工夫がされています。

漫画は漫画です。建築パースや物理学ではないので、漫画を魅力的に見せる背景をこころがけましょう。

当然、ある程度正しく描ける力がなければ、魅力的どころかめちゃくちゃになってしまいますので、最初は基礎をちゃんと練習しましょうね。


Posted at 22:01 | 背景とパース | TB(0) |
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