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2020.04.07

イラストレーターの分類となり方のかんたんまとめ

某質問サイトに答えたときの記録です。

個人的に、進路選択等にあたり、重要な要素だと思う部分は赤字にしています。


イラストレーターには大きく二種類あります。



フリーランスイラストレーター(自営業)



●メリット

なるのが簡単(名乗ればそれで終わり)

自分の得意なスタイルで勝負できる

仕事を選べる(ただし仕事を選べる立場になれる人は多くない)

自営業なので在宅・自分のペースで仕事ができる

年齢・学歴が完全に不問(未成年は保護者の承諾が必要になることが多い)

兼業が可能(フリーランスイラストレーターの多くが兼業している)



●デメリット

プロの半数以上が年収100万以下、かつ非常に収入が不安定

自営業なので厚生年金等の待遇がない(老後不安がとても大きい)

経理営業等、絵以外の業務もすべて自分でこなさなければならない(外注はできる)

数年売れるのは可能でも、数十年売れ続けるのは非常に困難

社会的信用が低い(ローンが組めない、クレジットカードが作れない等の場合もある)

すべての最終責任が自分



●進路

学歴不問なので進路は何でもいいが、生計をたてられない可能性が高く、兼業が必要になることが多いため、兼業に合わせた進路をとるのが現実的。

美術系進路はそういう意味ではお勧めしない(就職先がかなり限られる&ブラック率が高まるため)

アニメーターやゲーム会社社員を経て独立する予定なら、それに合わせた進路をとる。



●なり方

基本は名乗るだけ。資格も免許も学歴も必要ない。逆に言えばこの資格や学歴をとれば良いというものも存在しない。

自分で絵を使ってほしい会社にアピールし、自分で仕事をとってゆく。

下記の「会社員イラストレーター」をやりながら、ノウハウや人脈を構築したうえで、独立する人も多い(フリーランスでは一番堅実な方法)。





・会社員イラストレーター



●メリット

正社員ならば安定収入と厚生年金等の待遇が見込める(ただし会社による)

絵以外の業務をしなくていいので、絵だけに専念して仕事ができる

新人のうちに組織の中で働けるため、会社や社会の仕組み、業務上ノウハウなどを学べる

正社員なら社会的信用が高まる

一社員にすぎないので、最終責任はない



●デメリット

非常に競争率が高く、基本は選ばれしエリートの仕事。

高い基礎力が必須のため有名美芸大卒が圧倒的有利。最低でも専門卒以上の学歴は必要(新卒で就職する場合)

就職した会社の仕事しかできない・基本的に仕事は選べない(キャラが描きたいのに、背景しか描かせてもらえないなど)

就職した会社によっては倒産リスクは少なくない(特に中小)

正社員でない場合は安定性はかなり低い(ちなみに「業務委託」「請負」というのは社員ではなくフリーランス扱いなので注意)

中途採用の場合は実績に加え、年齢も考慮対象になる(若い方が有利)



●進路

上記のとおり、有名美芸大に行くのが有利。高校から美大用予備校に通うことになる。学力も必要(偏差値55~60程度)

ただ、美芸大は学費が非常に高い大学が多いので、保護者の方に早くから要相談。

経済的な理由でどうしても無理な場合、専門という道もあるが、専門は基本的にレベルがかなり低いので、相当な覚悟でのぞむ背水の陣となる。家が裕福でないならおすすめしない。

専門に行く場合も美大用予備校は通った方がいい。
(基礎訓練の場なので)



●なり方

大学や専門の卒業時に就職活動して就職する。競争率は、中小企業ですらかなり高いと思っておいてよい。大企業は有名美芸大トップクラスでも厳しいレベル。

普通大学から新卒での就職はかなり難しいと思うが、個人でフリーランスでプロ活動をし、実績があり、ポートフォリオ(就職用の作品集)が充実していれば、無理ではない。

新卒で就職活動をしなかった場合、フリーランスで活動した後、その活動実績をもって中途採用に応募する道もある。(この場合は学歴不問であるケースがほとんどなので、この道を目指すなら学歴は気にしなくてよい)

未経験で一切活動実績がなく、新卒でもない状態での就職活動はかなり厳しいと思う。




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どちらを目指しても、一長一短あります。

ぶっちゃけて言うと、「社会に出た当初から人並みの収入を得たいなら、超狭き門をくぐって会社員イラストレーターになるか、学生時代からフリーランスで売れまくるか」どっちかしかないです。

それが無理そうだと思うなら、最初から兼業を前提とした進路に進んだ方が堅実です。

会社員を目指す場合、難関美芸大を目指すのが定石であることから、絵の実力だけでなく、実家の裕福さ、学力の高さなどの要素も大きく関連します。

経済的事情等から美芸大を目指すのが難しい場合、専門に進むのはかなりの賭けとなるため、普通大学を目指し、兼業フリーランスイラストレーターを目指す方が堅実になると思います。

ただし、就職を希望している場合で、かつ自分の力を信じるなら専門に賭ける手もあります。
就職希望の場合、普通大学は就職情報やポートフォリオ制作情報等で、かなり不利になる可能性が高いです。(フリーランス志望のばあいはほぼ関係しません)

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2012.01.29

イラストレーターとは

ここでは、イラストレーター全般の進路などについて書きます。
コミック系イラストレーターの場合の話と重複する内容も多いですが、ご容赦ください。


イラストレーターになりたいから、美芸大に行きたい、または専門学校に行きたい・・・そう考える方は多いと思います。

しかし、ここについては、いろいろな要素を考えなければなりません。



1.「イラスト」とは何か

すごく初歩的な話ですが、学生さんだったりすると、ここをわかってない人は多いです。

Wikipediaより引用しますと「イラスト」とは、「図像によって物語、小説、詩などを描写もしくは装飾し、また科学・報道などの文字情報を補助する、形式よりも題材に主眼を置いた図形的もしくは絵画的な視覚化表現」とのことです。

わかりづらいですが、要するに「何かを装飾し、補助するための絵」と思ってよいでしょう。
つまり、イラストは「主役」ではないのです。「何かを助けるための絵」なのです。

本の表紙なら、主役は「本の中身」です。ゲームキャラクターなら、主役は「ゲーム」です。CDジャケットなら、「CD」が主役となります。
イラストはあくまで、それらの魅力をひきたたせるための、「脇役」でしかありません。「補助役」なのです。

ここは重要です。つまり「何かを助けられる絵」でなければ、「イラスト」としての需要はないのです。どんなに絵自体が魅力的だったとしても。
「主役」に「脇役として必要とされる絵」が「良いイラスト」なのです。
イラストレーターの仕事は「主役に気に入ってもらえる、主役をひきたたせる絵」を描くことなのです。
もっと言えば、「主役を売れるようにするための絵」です。

けっして、絵が主役なのではありません。それをわかっていないと、イラストレーターという仕事は勤まらないでしょう。

それに対し、「絵自体が主役」であり、絵そのものが価値を持つのがアートです。
画廊で売られている絵、あれは「絵自体」が額に入って売られていますよね。何かを装飾も説明もしていません。主役は「絵」です。
だからこそ、「絵自体が持つ魅力」というものが、非常に重要になってきます。
ああいう絵を描く人は「イラストレーター」ではなく「画家」とか「アーティスト」と呼ばれます。

たまに、絵のジャンルによって「イラスト」か「アート」か区別するような人もいますが、それは正確な区分けではありません。
リアルな油絵だろうと、アニメコミック絵だろうと、幼児の落書きのようなへたうま絵だろうと、それが補助的に使用されているなら、「イラスト」ですし、独立して価値を持っているなら「アート」や「絵画」と呼ばれるものになるでしょう。

ですので、「自由に自己表現をしたい」「好きなように描いた絵を買ってもらいたい」と考える人は、イラストレーター向きではありません。それは画家などにならないと実現できないことです。

イラストレーターは基本、クライアント(依頼者)に「こういう絵を描いてくれ」と依頼されたとおりの絵を描く仕事です。
それが描きたいものだろうと、そうでなかろうと、自分の表現と違っていようと、依頼されたら何でも描く、というのがイラストレーターです。
もちろん、得意不得意があるのは当然ですし、自営業ならば断るのは自由です。(その分収入もなくなりますが)
しかし、「依頼されたものを、依頼どおりに描く」というのがイラストレーターという職業なのだということは、理解しておきましょう。



2.「売れるイラスト」とは

1.に書いたとおり、イラストは「補助的存在」であり、「何かを上手に助けることができる絵」が「良いイラスト」であり「売れるイラスト」となります。
そこに、イラストレーターという職業の難しさがあります。

なぜなら、世間を見てもらえばわかるとおり、「売れるイラスト」とはあまりに千差万別だからです。

世の中はイラストに溢れてますよね。本の表紙、雑誌やパンフレットの挿絵、CDジャケット、ゲーム、LINEスタンプ、パッケージ・・・。
写真のようにリアルなイラストもあれば、幼児が殴り書いたようなヘタウマ絵もあります。

それはイラストを買う立場の人が、「その絵が使いやすい」と判断したのでそうなっているわけですが、「使いやすい」とは必ず「上手」ではないです。
「個性的すぎない」ことが重要なこともあれば、「ゆるい」ことが大切だというのもあるでしょう。
もっと言えば、「急いでたから、声かけた中で、とにかく早く描ける人に頼んだ」なんて事情もあるでしょうし、「安い人がよかった」なんて理由もあるでしょう。

つまり、「どういうイラストが売れるか」というのは、雑多な要素が複雑に絡んでおり、明確にはわからないのです。

上手なら売れるわけじゃない、もちろん下手なら売れるわけもない。センスがあればいいというけれど、どういうものが「センスが良い」のかそもそもわからない。似たようなイラストなのに、すごく売れる人も、そうでない人もいる。

これは、有名な美芸大の教授にだってわかりませんよ。誰にもわかりません。

イラストレーターの多くは自営業です。ということは、絵の力だけではなく、営業力も相当に重要になってきます。
つまり、人脈を作る力や、うまく自分の絵を売り込む方法を考えられることなどです。
また、もちろん運や時流に乗る力も重要になってきます。
似たような絵であっても、売れそうな媒体に上手に売り込んで、時流に乗れば、他に差をつけて売ることができるでしょう。

多少画力が上の人より、人懐っこくどこにでもでかけていって、誰にでも「仕事ください」と言ってまわることができる人の方が、イラストレーターとしては成功しやすいです
(人見知りとか人と関わりたくないなどの理由でイラストレーターを考える人もいますが、そういう人には難しいでしょう)

このあたりのことは、当然どんな美芸大に行っても学べません。経営学などの方が近いかもしれません。

なので、結局「どうやったら売れるイラストが描けるのか」という部分は、美芸大や専門学校などに答えはないのです。

イラストレーターとは、そういう単純な仕事ではありません。

何が良くて、何が悪いかもわからない。何をどうしたら売れるのかもわからない。運にも大きく左右される。
そういうわけのわからない状況の中で、自分で道を切り開いていく力がある人でないと、難しい職業です。

「美芸大や専門学校に行ったらイラストが上手になって、イラストレーターになれる」という幻想は捨てましょう。
そういう、「誰かが綺麗に整備してくれた道」はありません。自分で草刈ガマを構えて、木や草をなぎ倒しながら、自分だけの道を作っていく覚悟を持ちましょう。





2017/3/15
2012.01.28

イラストレーターの就業形態

さて、イラストレーターといってもいろいろな媒体、タッチがありますが、このサイトを見ている人のほとんどはコミックテイストのイラストを描く方だと思います。
ですので、ここではコミックテイストのイラストを想定して話をします。



イラストレーターについては、大きく二つの就業形態があります。



1.会社員として勤める
2.自営業(フリーランス)


ただ、大きな問題がありまして・・・。



1.会社員として勤める→イラストレーター専業の就職なんてほとんどない


2.自営業(フリーランス)→いきなり自営業にして食べていけるイラストレーターなんてほとんどいない


つまり、「どっちも無理じゃん!」という現実があるのです。


 


えええ、じゃあ普段私たちが見ているイラストレーターさん達はいったいどうしてるの!!??


という疑問が湧いてくるかと思います。もちろん人によっていろいろですが・・・。



1.他の職業と兼業している


これが一番多いと思います。
絵に関係した仕事を本職にしている人もいれば、そうでない人もいます。下で詳しく説明しています。
あと若い子だとフリーターをしながらというのも多いと思いますが、まあ博打ですね・・・。そのまんま、ただのフリーターで、気づけば三十路って可能性もありますから・・・。



2.ゲーム会社のグラフィッカーになる


会社によって、「2Dデザイナー」「イラストレーター」「アートデザイナー」など名称が違います。
多くの子が「コミック系イラストレーターとして就職したい」と思う場合、コレしかないと思います。
しかし、最初に「ほとんどない」と書いたとおり、非常に狭き門だと思っておいてください。学校出れば就職できる〜なんて思っていたらオオハズレです。
専門学校でダントツトップくらい上手な子で、なんとかなるかどうか??くらいだと思います。たいして上手でもないのに、ゲームやイラストの専門行ったって、まず無理ですよ。

今はSNSゲームなどの流行で一時的に増えていますけれどね。なお、地方だとほとんどないと思います。東京に集中しているんじゃないかな。



3.自分の稼ぎだけで生活していない


こういう人も多いですね。若い人なら実家住まいが多いし、あとイラストレーターには女性が多いんですが、理由としては単純で「旦那さんが生活費稼いでくれるから」というのがあります。今の私もそんな感じです。
ただ結局職業人としては自立できていないということなので、若い人がいきなり目指すものではないですね。




4.上記1〜3などの過程を経て、十分に稼げるようになってから独立(自営業)する


今、独立してやっている人の多くがコレですね。広告会社やゲーム会社、アニメーターなどを経て、十分実績やノウハウ、人脈を築いてから独立するというものです。もちろん全然関係ない仕事をやりながら、イラストはイラストでフリーランスでやり続けて、イラストで独立する人もいます。


 


ということは・・・、上記のうち自立できていない3を除けば
「非常に狭き門」を目指してグラフィッカーとして就職するか、他の職業に就職するか、まずどちらかしかない

ってことになります。
(もちろん、学生時代からフリーランスとして相当に売れ、卒業時にはほぼ一本で食べていけるほど有名になれば別ですが、そういう人は多くはいません)


イラストレーターになりたい人は、高校のうちから、どちらを目指すのかよく考えておいた方がいいと思います。


というのは、どちらを目指すかによって進路が変わってきますので。




■グラフィッカー(会社員イラストレーター)になりたい場合の進路


美術系の進路を選ぶのが普通ですが、経済的に厳しい等の場合、普通の大学からなどでも目指すことはできると思います。
下手に高額な三流美大とか、役に立たない専門学校などに奨学金で入るくらいなら、普通大学の方がずっとマシということもあります。
この場合の進路については、こちらの記事に書いています。



■他の職業と兼業する場合の進路


その職業にあった進路を目指すことになると思います。

できれば少しでも絵に関連した仕事をと考え、デザイナーなどを目指す人もいると思いますが、コミック系のイラストレーターの場合、普通のデザイン会社や広告会社での兼業は難しいと思います。

仕事上でコミック系イラストってそれほど描くこともないだろうし、クリエイティブ系の仕事は、たいてい深夜残業が当たり前など超激務なので、会社終わってからイラスト活動もほとんどできない可能性がありますので、そこはよくお考えください。

コミック系イラストレーターの場合はアニメーターや漫画家などとの兼業も多いですね。
でも、こういう人の場合、まずアニメーターや漫画家の方が本業で、副業としてイラストの仕事をしている人がほとんどです。
アニメーターはアニメーターで生活できない給料だし、漫画家はこのサイトに書いてるとおり、やっぱり大変な仕事です。なので、「イラストレーターでは生活できないから」という理由でこのあたりと兼業するのを目指すのは、あまり現実的じゃないかも。

あと、漫画が上手な人なら、二次創作の同人などを売って、生活費にあてる場合もあるようです。これは売れる同人誌が描ける人ならありでしょうが、生活費にできるほど売れる同人誌というのも、簡単に描けるようにはならないと思うので、こちらも最初から目指すようなものではないと思います・・・。腕に自信ありなら、これでいけるかもしれませんけどね。

だから、本当は一番いいのは「安定していて堅実で、拘束時間が少ない仕事」なんですよね。事務職とか。
そういう仕事につきたいなら、地道に高偏差値の国立大学でも目指すのが一番良いと思います。
イラストレーターになりたいって子は、なかなか「イラストレーターじゃ食べていけないから、まずは事務職を目指して、高偏差値の大学をめざします」とはならないんですけどね…。夢がないし、大学では絵の勉強したいから。

でも、長い目で見たときに、こういう道の方が長く堅実に絵を描き続けられるということもあるので、検討してみてください。


※2016/8月 具体的な進路について、この記事にまとめました。
上記とほぼ重複する内容ではありますが・・。

2012.01.28

進路チャート


2018/1/28
イラストレーターになりたい場合の進路について、あまりに考えないといけないことが多いので、チャートにしてみました。

もちろん、「このとおりにしないとイラストレーターになれない」ということではないですし、「このとおりにすればイラストレーターになれる」わけでもありません。
あくまで、ただの参考です。
他でも書いてると思いますが、「イラストレーターになれるかどうかは、進路はあまり関係なく、個人の実力や運次第」というところが非常に大きいです。

高卒でもイラストレーターとして成功している人はいますし、東京芸大を出ても、なれない人はなれません。
そのあたりはこの記事に書いたとおりです。

なので、「イラストレーターになるため」という意味合いでは、「進路はどうでもいい」の一言に尽きるのです。



では、このチャートは何のためかというと

「イラストや絵の道を進む場合に、多少なりとも有利になりやすい(特に就職を目指す場合)」

「イラストレーターになれなかったときに人生が大きく崩れない」


この二つを重点的に考えて、作られています。

なお、ゴールに使われている言葉について説明しておきます。
東京五美大=多摩美術大学、武蔵野美術大学、日本大学芸術学部、東京造形大学、女子美術大学
公立三美芸大=京都市立芸術大学、愛知県立芸術大学、金沢美術工芸大学

※公立三美芸大は私が勝手に作った言葉です…。

進路


以下は補足です。

まず、最初に学年で区切っているのは、単純に「上位美芸大を目指すなら、遅くとも高2春くらいから美大用予備校に通う必要があるから」です。つまり、三年生以上は、美芸大を狙うには遅すぎるってことです。
もちろん、浪人を考えるなら、可能性はあります。

他にチャートを全部見ていくとわかるでしょうが、重要な分岐点は三つあります。

1.家が裕福か

2.勉強がある程度できるか

3.絵の実力がズバ抜けている(プロ並み)か



美術系の進路は、
「学費と準備(予備校)にお金が相当かかる」
「ツブシがきかない」
「就職が悪い」

というリスクがあります。

ですので、家が裕福でないと、そもそも美術系の進路は厳しいです。
まず予備校代(上位美芸大を目指すには予備校は必須)や学費が払えないですから。

また、ツブシがきかず就職が悪いのでは、奨学金も難しいです。
しかも本気で勉強するなら超忙しいので、在学中はバイトもままなりません。

早い話が「予備校代も、学費も、生活費も、全部親がまるっと面倒みてくれる人じゃないと厳しい=実家が裕福じゃないと無理」です。
もちろん、苦学生する人もいますけど、決してオススメしません。
イラストレーターを目指す場合は、そこまでして美芸大に行く必要はまったくないです。

また、就職にせよフリーランスにせよ、結局は本人の実力重視。
ですので、どんな学校を出ても、最終的には3.の実力の問題です。
※美術系の進路に行けば実力を上げられる、と考えるのはマチガイです。
詳しくはこちらの記事に。

2.の勉強については、比較的安く、レベルも高い公立美大は、すべて勉強ができないとダメだからです。
「美術系に進むから、勉強はできなくてもいい」と考える人がいますが、それはとんでもないです。
特に家が裕福でない人は、勉強ができなければ、それだけで美芸大は諦めるしかなくなります。
美術系の進路をとる場合も、勉強は非常に重要なのです。

そして、チャートを見ると、専門学校や三流美大については、
「将来就職しなくてもいい大金持ち」にだけ許された進路になっています。
専門学校や三流美大というのは、「イラストレーターになれなかったらどうしようもない」という進路です。
就職が非常に厳しい。
おまけに学費も高い。
非常にリスクの高い進路なんです。
イラストの専門学校については、こちらの記事に詳しく書きました。

家が金持ちなら、役に立たない学校に行ってニートやフリーターになってしまっても、実家がフォローして人生立て直せることもあると思います。
でも、そうでなければ、本気で人生崩れます。
奨学金なんか借りてたら目もあてられません。
だから、就職しないとダメな人は、行っちゃいけませんよ。

ただし、チャートでは「すでにプロ並みの力と実績がある人」については、富豪でなくてもやむをえず専門学校でもアリとしています。
それくらいの実力を持つ人なら、専門学校や三流美大からでもプロになれる可能性があるからです。「イチかバチかを狙える」ってことです。
もちろん、イチかバチかですから、リスクはそれでも高いですが、挑戦する価値はあることはあります。

私なら、そこまで実力があるなら、学費も高くツブシもきかず就職もできない専門や三流美大なんかに行かず、普通大学に行きながらイラストレーターを目指しますけれど、世の中には「どうしても美術系の学校に行きたい」って人がいますので…。

ちなみに二流美大というゴールがないのは、ゴールにするにはあまりに中途半端だからです。
「望ましくはないけれど、家が裕福なら、ナシではない進路」くらいな感じでしょうか。
どうせ目指すなら一流を目指してください。結果的に二流に行くことになっちゃったなら仕方ないけれど。

ただ、チャートで一つだけカバーしきれなかった道があります。
「偏差値50以下」「家が裕福」「実技実力が高い」
こういう人の場合、推薦入試などで東京五美大(東京芸大除く)に入学できる可能性があります。
「勉強は苦手だけど実技は得意で、家も金持ち」って人は、推薦でムサタマを狙うはアリだと思います。

逆に、「勉強はできるけど、実技はすごく苦手」という人が、「勉強で美芸大に入る」は、私はあまりオススメしません。
(教師や研究者など、学術関係に進みたい場合は別です)

当たり前ですが、勉強だけできて実技ができない人は、実務できる人間になりません。
美術系では「実技できる>>>>>>>勉強できる」です。
勉強ができる人は、普通の大学に行った方が良いです。

2012.01.28

学校に何を求めるのか

ここまでで、イラストレーターという職業が、なんだかよくわからない、「ちゃんとした道順がない」仕事だというのは理解できたと思います。
美芸大や専門学校が、たいした助けになってくれないのも、よくわかったと思います。

そのうえで、美術系の進路などに進みたい場合は、「何を求めて学校に行くのか」を明確にした方が良いと、私は思います。

たいした助けにならないとはいえ、美芸大や専門学校で手に入るものもあります。
もし、そこに学費分の価値があると思えるなら、そういった学校に行くのも、悪い選択ではありません。


1.絵に集中できる時間

美芸大や専門に行くことで、確実に手に入るものがあります。
「時間」です。

高校生は受験勉強しなければならないし、社会人は働かないといけません。
その点、美術系の学校に行けば、少なくとも在籍している間、絵のことだけに集中していられます。
これはけっこう大きな利点ではあります。

ただし、美芸大でもたとえばデザイン学科や建築学科ですと、非常に多忙で、好きな絵を自由に描ける時間はかなり少なくなります。ファインアート系ならマシですが、今度は就職は難しくなります。
専門学校でも、イラストの学校なのに就職対策があったり、映像の授業があったり、イラストに関係ないカリキュラムで忙しい学校もあります。

また、ただの「時間」を手に入れるだけに、数百万~1000万ほどする学費を払うのか?という問題もあります。

そのあたりを考えると、このメリットのためだけに美術系学校に行けるのは、よほど裕福な人だけと言えるでしょう。


2.学歴

美芸大を出れば「大卒」、専門学校を出れば「専門卒」(ただし、認可されている専門学校のみ)の学歴が手に入ります。
これらは「高卒」に比べれば、かなり社会で有用な資格です。
とれるなら、とっておいて損はありません。

ただ、学歴が関係してくるのは、主に就職ですが、「美芸大卒」「美術系専門卒」の学歴は、かなり限られた用途でしか役に立ちません。
まず、「イラストレーター」を目指す場合において、「学歴」はほとんど役に立ちません。
他でも書いてきたとおり、イラストレーターは就職自体がほとんどなく、そもそも「就職する仕事ではない」からです。
唯一、例外があるのは、ゲーム業界です。ゲーム関係での就職については、こちらの記事をどうぞ。

それ以外のイラストレーターは、ほぼ自営業です。就職しないので学歴も関係ないのです。

ですので、イラストレーター志望が学歴を気にする場合、「イラストレーター一本で食べていけなかった場合の保険」となります。漫画家と同じですね。

当然ながら、自営業で食べていけるイラストレーターというのは、ほとんどいません。ですので、実際は副業として何か安定した職が必要になることが多いです。
その保険として考えた場合、美芸大や美術系専門の学歴は、あまり有効ではないです。

美芸大の学歴が活かせる就職といえば、「デザイン職」くらいしかありません。それもデザイン学科なら、です。ファインアート系の場合は、就職はかなり悪いでしょう。
専門学校も同様です。デザイン専門学校でデザインを学んだ場合には、「デザイン職」の就職には役立つでしょう。しかし、イラストレーターを目指して専門に入った人の多くは、デザインではなくイラストを学んでいると思います。
その場合、就職で学歴が役に立つかというと、そこまででもないでしょう。

というわけで、学費とのバランスを考えた場合に、やっぱりそこまで良い選択ではないんですよね。美芸大というのは。



3.絵の技術等


基本はコレを主目的として、大学や専門を希望する人が多いでしょう。

ここについては、「どういったテイストのイラストを描くのか」によります。
私は美芸大の勉強が直接的に役立つのは、「リアルな描写力が必要なテイスト」と「アーティスティックな手法・感覚が必要なテイスト」この二つくらいだと思います。

前者はわかりやすいですね。高度なデッサン力や描写力が必要になりますので、美芸大入試の勉強や、入学後の勉強がそのまま役に立ちます。
後者はちょっと難しいのですが、美芸大で学ぶ、いわゆるファインアートの分野の技術や勉強を活かした手法です。私はファインではなかったので具体的には例が出せないですが。
このあたりは独学で無理とは言いませんが、美芸大のような幅広い技術を学べる環境があった方が良いのは間違いないでしょう。(ただこういうテイストのイラストって需要少ないので、仕事にするのは難しいでしょうけど)

上記以外のテイストのイラストに、美芸大は必要ないと思います。基本は独学で習得可能な技術しか使わないと思いますので。あとは個人のセンスやら営業力やらの問題だと思います。それは学校では学べません。

なお、上記はあくまで美芸大です。専門学校の場合は当てはまりません。
つまり、私は専門学校は、いかなるイラストの勉強にも不要だと思っています。

ただし、ファッション系のイラストについては、ファッション専門学校の授業はある程度有効だと思ってます。セツモードセミナーなど有名だったんですが、閉校しちゃったんですかね・・。

若い子に人気が高いコミック系イラストについてはこの記事で書いたとおり、学校はほぼ関係ないです。
美芸大だろうと、専門だろうと、「学校で学んで上達するようなものではない」と思っておいてください。

ですので、「絵の技術向上」は、これもかなり限られた範囲で有効ということになります。



4.就職


2.で書いたとおり、就職したい人は、そもそもイラストレーターを目指すべきではないです。就職する仕事ではないので。
例外としてゲーム業界のみ、一応就職情報などはあると思います。
でも、こちらの記事に書いたとおり、非常に狭き門である覚悟はしておいてください。

あとは、デザイナーや美術教師など「保険となる職業」を考えるのであれば、美芸大でも良いと思います。
ただ、デザイナーは競争率も高く薄給激務で、美術教師もそれなりに難しいです。簡単になれる職業ではありません。

イラストレーターと副業するような就職を考えるなら、普通の文系国立大学などに行った方が良いと思います。



5.青春・友情・自己満足


これについては、専門はわかりませんが、美芸大については、人によりますが満足いくことが多いのではないでしょうか。

絵を描く人にとって、美芸大の青春は楽しいと思います。まあ、本気でないのに入ってしまった人は、周囲についていけず劣等感に悩まされるということもあるようですが。
きちんと受験対策をして、早くから予備校に通い、美芸大という場所がどういうところなのか、知ったうえで入学したなら、楽しめると思います。
課題地獄にはなりますが、それが楽しいと思える人が入学する場所ですから、基本は。

大学は高校までと違い、かなり自由に学び遊ぶことができます。(学科によっては課題課題で遊ぶどころじゃないけど)
これも人によりますが、友人を作ることもできるでしょう。大学でできた友人というのは、社会に出る直近にできた友人というのもあり、長い付き合いをできることが多いと思います。
私も、大人になってからも頻繁につきあいのある友人の多くが、大学時代の友人です。

また、絵が好きな人は、「美術系の進路」にこだわる人が多いです。

美芸大に憧れがあり、何らかの理由で諦めた場合も、諦めきれず、社会人になってからも「あのとき美芸大に行けていれば」と、ずっと後悔するような人もいます。

上記のとおり、美芸大は別に魔法の学校ではなく、与えてくれるものも限られています。多くは本人次第のものです。
それでも、行けなかったせいか、美芸大に過剰な憧れや期待を抱いて、「行けなかったこと」を後悔する人というのはいます。
これは、いわゆる「学歴コンプレックス」なのですが、そう馬鹿にしたものでもなく、人によっては本当に一生ひきずってしまいます。
年をとって、やりなおしがきかない年齢になってから、いきなり「美大を受験する」なんて言い出す人もいます。

私は、イラストレーターになりたい場合に、一番良い進路は「国立文系普通大学」だと思っていますが、どうしても美芸大に強いこだわりがある人、行かないと一生後悔しそうな人は、「自己満足」のためであっても、美芸大に行くというのは悪い選択肢ではないと思います。

ただし、学費が高い・入試準備が大変など、負担が高いです。そこはよく考えないと、単なる自己満足のために、一生涯、借金を返すために棒にふるなど、取り返しがつかないことになりますので、よくよく考えてくださいね。



以上、長く書きましたが、美芸大で手に入るものは、思ったほど多くはないのです。
美芸大は学費や受験準備など負担が大きい割に、つぶしもきかないし、高収入な就職をできる可能性も低いです。
はっきり言って「高リスクな進路」なんです。

なので、私はイラストレーターになるために美術系の大学や専門に行くのは、おすすめできません。
普通大学に行って、堅実な道を保険で残しつつ、独学で学ぶのをすすめたいです。

でも、何が手に入り、何が入らないのかを理解し、高いリスクもよく知ったうえで、それでも行きたいと思うなら、行っても良いと思います。
上記のようなことをよく知り、考え、覚悟したうえで、美術系の学校に行くのなら、きっと学校生活は有意義なものになると思います。

2017/3/14