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2015.09.06

Pixivの評価を上げるには?

2016/9月

某質問サイトを見ていると、「一生懸命描いて、自分ではなかなかよく描けたと思うのに、思ったように評価がもらえない」
「自分より明らかに下手な人より評価がもらえない」といったことで真剣に悩んでいる方をお見かけします。

お気持ち、とてもわかります。私も同じように思うことはしょっちゅうです。

私もまだまだですが、自分なりにPixivの傾向などを見ていて、思ったことを書いてみます。
もちろん、自分自身の経験も入っています。

こんな記事を作るくらいなので、おまえはどんだけ高評価なんだと思われそうですが、オリジナルイラストだと、だいたいオリジナルランキング20~50位、ブクマは1000超えることもありますが、多くはないですね。
フォロワーは万単位でいますが、それは二次創作の漫画などを描いていたせいです。二次創作だと評価は桁違いに上がります・・・。

なので、私もまだまだ修行中です。
いっしょにがんばりましょう!


1.最初に

最初に頭に入れておいてほしいことです。

◆「Pixivで高評価=良い絵・上手な絵」ではない

Pixivで高評価のつきやすい絵というのは、ある程度の傾向があります。
かつPixiv以外での宣伝力やネームバリュー、ランキングシステムなどにも大きく左右されます。
なので、Pixivで評価されないからといって、落ち込むことはありません。
私が好きなイラストレーターさんで、大きな仕事をこなし、ちゃんとした出版社から画集が出ているような人がいるのですが、その人の評価も決して高い方ではないです。

ここでは、その前提のうえで、あくまで「Pixivで評価を得やすい」という視点で書きます。
ここに記載している条件の絵が、「良い絵」というわけではないので、ご注意ください。


◆もともと、簡単に高評価がもらえる場所ではない。

まず、重要なこととして、Pixivには、プロやセミプロも多数参加しています。
ガチプロですら、それほどの評価をもらっていないことも多いのです。
素人がちょっと頑張った程度では、ほとんど評価はもらえないと思っていいでしょう。


◆たいていの人は「うぬぼれている」

絵を描く人間の多くが、「自分の絵を過大評価、他人の絵を過小評価」する傾向があります。
なので、「私も同じくらい上手なはずなのに、なんでこの人の方が評価もらえているの?」という場合、他人から見ると、「その人の方がはるかに上手である」ということも多いです。


ただ、この「うぬぼれ」は実は大事です。最初から冷静に客観的に、自分の絵の下手さを自覚できるとしたら、「そもそも絵を描かなくなってしまう」可能性が高いからです。
絵を描き続けられる程度にうぬぼれられることは、恥じることではありません。
ただ、そのうぬぼれだけが強すぎると上達できませんので、うぬぼれて描き、描いたあとで反省し、を繰返すのが理想だと思います。


というわけで、「もともと自分は高評価をもらえないのが当然のレベルだ」という自覚を持つのが重要です。
(まあ、中には例外もいますけどね。ガチプロで知名度もありPixiv受けする絵柄なのに、本当に評価もらってない人もいて、謎です・・・)


それを踏まえて、それでも少しでも評価を伸ばすためにできることを書いてみます。
※ここではあくまで「Pixivの評価を伸ばす」ことを目的にしています。


◆絵の情報量を増やす

Pixivの傾向として、「情報量の多い絵」が評価を得られやすいです。
「複雑で書き込みが多く、色数が多い絵」ですね。
もちろん、シンプルな絵で好評価を得られる人もいますが、高い描写力やセンスが必要なので、上級者向けです。
ランキングに入らないレベルの人は、いきなりそこを狙うのはやめましょう。

では、どうしたら情報量が増えるのか。

○キャラ絵の場合は描く人数を増やす
多人数の絵はそれだけで目をひきます。

○背景を細かく描きこむ
評価がもらえない人にありがちなのは、「背景をほとんど描いてない」です。
模様だけでごまかしたり、適当に花散らすだけとかは、やめましょう。
そういう背景でも高評価を得られる人もいますが、相当のセンスや画力が必要なのでやっぱり上級者向けです。

○オーバーレイなどのレイヤー効果も使って色数を増やす
バケツツールでぺったり色塗って終わりはやめましょう。
デジタルではレイヤー効果という便利なものがあるので、オーバーレイやスクリーンなどを使って色彩豊かにしてみましょう。

○一枚の絵に最低10時間かける
逆に言えば「10時間以上かかりそうな絵」を描きましょう。
2~3時間で描いた絵で評価をもらえるのはこれまたやっぱり上級者だけです。


◆最低限のデッサン力を身に着ける

Pixivはデッサン力より、色彩や構図のセンスが評価に影響します。とはいえ、あまりにデッサン力がガタガタだと、当然評価は伸びません。
デッサン力については簡単に身につくものではないので、ここで細かい説明はできませんが、初心者の方はとりあえず「ヒトカク」で検索してみてください。
あとの上達方法はブログにいくつか説明していますので、どうぞ。


◆構図を煽りや俯瞰にしてみる

「評価が伸びない」と質問している人の大半が、「人物を一人、正面か斜め前からぽんと描いただけ」です。
もちろん、こういう構図で高評価を得られる人もいますが、やはり上級者向けです。
上級者でない人は、とりあえず、「煽りか俯瞰」の構図にしてみましょう。パースは嘘でいいので、かなり大げさにつけた方がいいです。
特に「煽り」は人目を引きやすいです。
実際にPixivでも煽り構図はかなり多いです。
さらに斜めにしてみる、あるいは魚眼レンズのような大げさなパースをつける、なども有効です。
「ぱっと見て迫力がある、目を引く」構図にするのです。


◆明暗差を強めにつける

影のくっきりした、明暗の強めの絵の方が評価される傾向があります。
多分サムネ段階で目につきやすい、印象に残りやすいからでしょう。
評価がのびないといっている場合、そもそもどこが光源かわからないほど、明暗が不明な絵が多いです。
光源をきちんときめ、明暗を強めにしてみましょう。
あるいは、明暗が強くつくような構図のイラストを考えてみましょう。


◆「見所」(ポイント)をつくる

その絵をぱっと見たとき、どこに目がいくでしょうか。
もし、「どこってことはない」場合、印象がぼんやりした絵になっている可能性があります。
どこか「ここを見てほしい」「ここがこの絵の主役」とはっきりわかる箇所を作りましょう。

キャラがいる場合はたいていキャラの顔だと思いますが、それ以外にも見所を一つ作りましょう。
たとえば、髪の毛がすごく丁寧にたくさん書き込まれてるとか、ドレスのフリルがすごく細かくてきれいだとか。
背景の空がすごくきれいだとか、森がとても丁寧に書き込まれているとか。
「この絵のここ、すごいなー」と思わせる「絵の見所」を作ると、その絵は印象に残りやすくなります。


◆季節感をつくる

当たり前ですが、夏には夏っぽい絵、春には春っぽい絵がウケやすいです。


◆ストーリー性をつくる

別に漫画にしろって意味ではないです。
その絵から何かストーリーが見える絵は、印象に残りやすく共感を得やすいです。

たとえば、ただ女の子と男の子がいるより、普通に歩いている男の子と、ラブレターを持って影に隠れている女の子の絵の方が、前後のストーリーを考えてわくわくします。
タイトルと関連付けるのもいい手です。有名な現代芸術ですが、ただの便器に「泉」とタイトルをつけただけで芸術になったようなものもあるくらいで。

女の子が眠っている猫を大事そうに抱いている絵があるとします。
「女の子と猫」ではそのまんまです。「ずっといっしょ」は仲良さが出てほほえましいですが、それでもちょっと普通です。
しかし「さようなら」となるとこの猫ちゃんは寿命がもうすぐなのか?それとも女の子が?と見る人がストーリーを想起します。
そのように、見る人が、「その絵の世界に入り込めるような仕掛け」を作ってみるのもいいでしょう。


◆時流に載せる

主には二次創作の場合になりますが、たとえばジブリの映画をテレビでやった直後にそのジブリアニメの二次創作を投稿すると、人気をとりやすくなります。
この場合、ツイッターで実況しながら見る人も多いので、ツイッターに載せるとなお良いでしょう。





3.ランキングにのる

一番評価に結びつく方法です。
0時~23:59までの評価、ブクマ、閲覧数などの評価の集計が翌日ランキングに反映されます。
しかしPixivの集計方法は謎です。私も知りません。企業秘密なのか、調べてもまずわからないです。
ブクマや評価数が、自分よりずっと低い人が、順位では自分よりずっと上にいたりします。
フォロワー数が多いほどマイナス計算されるという噂も聞いたことあります。(あくまで噂)
それでも、自分の経験などから、いくつかの傾向は読み取れます。(2016年夏の情報です)


◆投稿時間を考える。

集計期間が0時~23時59分なので、0時すぐに投稿した方が長い期間を集計期間にあてられます。
ただ、合計ではないので、単純に早く投稿すればするだけ良いというわけじゃないようです。
とはいえ、例えば23時59分に投稿してしまうと、さすがに集計期間がほとんどとれないので、ランキングに入るのは相当難しいでしょう。
それくらいなら、0時過ぎがムリでも、せめて翌朝くらいに投稿した方がランキングに入りやすくなります。


◆オリジナル作品を投稿する

Pixivではオリジナル作品は優遇されているようで、二次創作作品と同じ評価でも、高い順位にランキングされます。
また、総合デイリーランキングのあとにオリジナルランキングがあるのですが、こちらはかなり順位に入りやすいですので、
デイリーに入らないレベルでも、オリジナルランキングには入ることがあります。
ただ、残念なことにオリジナルランキングはチェックしている人が少ないのか、上位10位以内くらいに入らないと、あまり評価に関係しません。
また、オリジナルは二次創作より評価が得にくいので、そのあたりのバランスは自分で考えてみてください。


◆男性向け作品を投稿する

Pixivでは男性と女性で評価を分けて集計しているようですが、男性向けの方がかなり優遇されて上位にランキングされます。
これは、日々のデイリーランキングを見ていればわかると思います。上位のほとんどが美少女絵です。

たとえば本日のランキングでは、「女子に人気ランキング」第1位の絵は、「総合デイリーランキング」ではなんと第472位でした。ほぼランキングぎりぎり入るかどうか、の順位です。
一方「男子に人気ランキング」第1位の絵は「総合デイリーランキング」では第2位です。

見比べてみたらわかると思いますが、「男子に人気ランキング」と「総合デイリーランキング」では、
上位作品がほとんど重複しているのに対し、「女子に人気ランキング」の上位作品・・・特に腐向けなど、女性向け要素が強い作品は、「総合デイリーランキング」上位にはほとんど入りません。
そして言うまでもなく、評価への影響が大きいのは「総合デイリーランキング」です。ここに入るのが非常に重要なわけですが、
あからさまなまでに、「男性人気」が総合デイリーランキングに影響するのです。

私も、総合デイリーに入る絵は、ほとんど「男子に人気」ランキングでもそれなりの順位をとっています。
逆に「女子に人気」で10位内に入っても、「男子に人気」が200位以下だったりすると、デイリーでは400位くらいになったりしました。せめて中間とって100位くらいなんでは・・・?
と思った記憶があります。本当にどう集計しているのか不明です。

これは以前、Pixivでランキング上位のほとんどを腐向け作品が埋めてしまい、男性や腐向けが苦手な人がPixivから遠ざかってしまいかねなかったので、この仕様になったと記憶してます。
ランキングだけを意識して作品を投稿するなら、男性にウケるような作品を投稿するといいでしょう。


◆あまりに旬ジャンルはマイナス調整されることも

今もやっているかはわからないのですが、少なくとも私が知ってる範囲で、東方プロジェクトと黒子のバスケは、マイナス調整されていた時期があったと思います。
これは、あまりにも同じジャンルだけがずっとランキングを埋めないようにという配慮でしょうね。
ただ、最近では「おそ松さん」の作品がめちゃくちゃ多かったのですが、その作品のほとんどが女性向けだったため、「総合デイリー」上位にはほとんど入ることがありませんでした。
それくらいなら調整されないかもしれません。
ルーキーランキングでは、けっこう長い間、上位50作品くらい全部「おそ松さん」なんてこともありましたが・・・。(おそらくルーキーランキングは男女調整が入っていない)




4.見てもらいやすい作品

評価されるためには、まず作品を見てもらわないといけませんが、
Pixivでユーザーが作品を見る入り口というのは以下しかありません。
(ユーザー検索などでわざわざ探した場合を除き)

1.ホームでの新着作品
2.タグ
3.ランキング
4.フォロワー・マイピクへの新着通知
5.ブログやツイッターなど別媒体での宣伝



上記のうち1.はすべての作品に該当しますが、ほんの一瞬の話です。
その数秒の間に見てもらえなかった絵は、上記2~5に該当しない限り、もう誰にも見てもらえません。
しかし・・・
3.については「3.ランキングにのる」で書いたとおりですが。なかなか簡単ではない話です。
4.もフォロワーが多い人ならいいですが、多い人はこんな記事読んでないでしょう。
5.もできるだけやると良いと思いますが、ツイッターやブログのフォロワー数が多くない限り、効果は少ないでしょう。

つまり・・・・ランキングにも乗らず、フォロワーも少なく、SNSでのつながりも少ない人が攻略すべきは2.なのです。
どんなタグをつければ見てもらえるか、というのを考えることになります。
というよりは「見てもらえるタグをつけられる作品を描く」ことになります。

◆人気ジャンルの二次創作

言うまでもなく。
そのとき旬の二次創作であれば、クオリティが低くてもいつもより評価をもらえることが多いと思います。


◆漫画

絵が下手でも、漫画作品だと評価を得られやすくなります。
続きものだと、フォロワーも増えます。
ただ「漫画」というタグから見に来る人は少ないので、他のジャンルタグなどと合わせてつけることになるでしょう。


◆イベントタグ

オリジナル作品を描きたい、漫画ではなくイラストが良い・・・という人も多いと思います。
しかし、オリジナル作品の最大の問題は「そもそも見てもらえない」ことなんです。
どんなに素晴らしい作品も、見てもらえなければ評価されるわけがありません。

オリジナル作品で見てもらえるタグというのは、イベントタグくらいしかないんです。
「オリジナル」「女の子」なんてタグをつけたところで、そこから探して来てくれる人はいません。あまりに多すぎて、探索タグとしての役目はほとんど果たしていないからです。
Pixivでは、さまざまなイベントが行われています。イラコンなども(最近は少ないけど)あります。
どうせオリジナルを描くなら、そういったイベントタグをつけられるような作品にすると、見てもらいやすくなるでしょう。



5.フォロワーを増やす

4.で述べたようにフォロワーが増えると、評価をもらいやすくなります。
まず、フォロワーというのは当然あなたのファンなわけで、評価をくれやすい人です。
また、大きいのは、フォロワーには新作通知が行くということです。
そこから見てもらうことができます。

ただ、フォロワーが増えると、ランキングに載りにくくなるような気がします。
気のせいかもしれませんが・・・・。


◆連載漫画を描く
多分一番てっとり早いのはコレです。
私はけっしてフォロワーを増やす目的ではなく(笑)単に好きで二次創作で漫画を連載してましたら、かなりフォロワーが増えました。
続きが見たいものの場合、フォローしておくと通知がくるので、追うのがラクになるんですね。
Pixivのフォローってツイッターと比べてはずす人がかなり少ないです。
ただ、連載漫画で増えたフォロワーは、目当てがその漫画だけってことも多いので、他ジャンルのイラストなどには評価をくれないことも多いです(苦笑)。



まだまだ途中ですが、このへんで。
長いので、まとめなおすかもしれません。
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Posted at 17:53 | ■雑談 | TB(0) |
2015.09.05

オリンピックのエンブレム問題に思うこと

ここしばらくネットやニュースを賑わせていた、この問題。
結果的にデザイナーの佐野氏がデザインを取り下げ、ネットで彼を非難・追求していた民は「ネットの勝利」としたそうですが・・・。

佐野氏がデザインをとりさげた理由は、決して「盗作だったから」ではなく、「家族・関係者に迷惑がかかるから」とのもの。
実際に嫌がらせなどが発生していたようです。
であれば、これは「ネットの勝利」ではなく「卑劣な犯罪者の勝利」です

だって、デザインを取り下げさせたのは、正しい法的な根拠ではありません。彼の家族・関係者に嫌がらせなどをした犯罪者たちです。

これは非常に恐ろしいことだと思います。

一応過去にデザイナーの端くれだった経験から言って、少なくとも現時点で判明している限りでは、あのエンブレムデザインは盗作ではありません
偶然似たロゴが世界のどこかに存在しているのはごく当たり前のことで、あのベルギーのデザイナーの言い分などは、正直「ゴネ得」を狙った、完全な言いがかりだと思います。
ロゴというのは、0.1mmの違いが大変な違いになるようなシロモノで、あそこまで違ったら完全に別物です。

漫画やアニメで例えたら、「ひぐらしの鳴く頃に」と「けいおん!」の絵は似てるので、「けいおん」は「ひぐらし」の盗作だ!と言っているくらいには、めちゃくちゃな話です。
たとえば現在60代以上の、まったくアニメを観ないおじいちゃんおばあちゃんにとっては、「ひぐらし」も「けいおん!」も同じ絵に見えても仕方ないかもしれません。でも、多少なりともアニメや漫画を見る人にとっては、そもそもストーリーからして全然違うし、絵柄だって大分違うのがわかりますから、「は?何言ってんの?」って話になりますよね。
ホント、そういうレベルの話なんですよ、コレ。

佐野氏のデザインを批評するときに、第一回東京オリンピックの亀倉雄策氏のロゴデザイン(デザインを学ぶものなら嫌というほど見させられるデザイン)と比較されますが、佐野氏のデザインがパクりなら、亀倉氏のデザインなど、日本国旗そのままでパクり以前に「まんま転載」です。でもそうじゃない。それがデザインの世界です。
※このへんについてはこの記事下部にちょっと詳しく書きます。

こういうことはデザインを手がけている人間なら誰でもわかることですので、ベルギーのデザイナーが法的に訴えようなどというのは、「多少でも金がとれたらラッキー」という発想からとしか思えません。訴訟乞食とでもいいますか。「とりあえず訴えてみる」という海外的な発想だと思います。

私が驚いたのは、そんな多少なりとも業界知識のある人間なら、「こんなくだらないことマジで言う人間がいるんだ」と鼻で笑う程度の話が、日本のマスコミで堂々と取り上げられ、さも大問題かのように報じられたことです。
そしてそのせいで、「とにかく調子乗ってるヤツは叩きたくてたまらない」くだらない人間たちが、そこに食いついて、一斉に佐野氏のあら捜しを始めた。

正直、トートバックの件は真っ黒なので、あれはまずいと思います。ああいうことがあれば、「一事が万事」で、「そういうことをする人間なのだ」という印象がついてしまったのは否めないでしょう。
でも、だからあの件はすぐに認めて謝罪しましたね。
ですので、「盗作問題を起こした事務所を経営するデザイナーが、オリンピックのロゴデザイナーをやるのは、対外的にイメージが良くない」等の理由で、彼がはずされるなら、まだわかるのです。
でも、そうでもなかった。

何の、きちんとした根拠もないまま、ネットを通して彼の「叩き」が横行し、それが実際の嫌がらせに発展し、そういう「犯罪者」に屈する形で「やってられない」と彼はおりたわけです。

これは要するに「叩いたもの勝ち」ということです。

私はネットで彼を叩いた人が悪いとは思いません。無知か馬鹿だとは思いますけれど。彼本人や家族関係者に嫌がらせをした人間については、程度によりますが「犯罪者」だと思います。また、「叩けそうなヤツはとにかく叩いて楽しむ」という下劣な人間たちが「勝利」してしまう、今の日本の世論や世相もどうかと思います。

ただ、それより何より、その嫌がらせに屈して、デザインを取り下げてしまった彼と、彼を守りきれなかったマスコミやデザイン関係者に対し、非常に不安に思います。

佐野氏は、嫌がらせをしてくる人物がいるなら、きちんと法的対処をするべきだったのです。変なゴネ方をしたベルギーのデザイナーにも、即話をつけにいくべきでした。
そして、盗作ではないなら、堂々と「盗作ではない。何の問題もない。訴えるなら訴えればいい、こちらが勝つに決まっている」という態度で向かい続けるべきでした。

これができないのは、おそらく佐野氏だけではありません。
今の日本人…、特に40代前半以前の、比較的若い世代は、ほとんどそうではないでしょうか。
「きちんとした対処」をとれないんです。法的に訴えたり、警察に連絡したりということをしない。
そりゃ、そっちの方がずっと大変ですからね。佐野氏もこれ以上騒ぎが続いても、自分に何も良いことはないと踏んで、取り下げたのでしょう。

そして、マスコミもそれを「いい迷惑だった」みたいに終わらせようとしていますが、佐野氏が取り下げる本当の理由「嫌がらせ」については追及しないままです。
本来そちらの方がよほど問題ではないですか?正規の手順で選ばれたオリンピックのロゴデザイナーが、言いがかりに近い盗作疑惑をかけられた挙句、犯罪者による嫌がらせで失脚させられたんですよ。かかる税金だってハンパじゃない。
自分たちが撒いた種の結果がこれです。その反省もなしですかと言いたいですね。

今回の佐野氏のデザイン取り下げを、笑ってみていた「勝利」側のネット民も、笑っている場合ではないと思います。
なぜなら、今回の件は「多少似ていれば、非常識な誰かが勝手にパクり認定し、それをマスコミを拡散し、誰でも叩く馬鹿どもが相手が折れるまで叩き続け、最後は犯罪に近いことをやって失脚させる」ことが、「正しいこと」であるかのように、堂々とまかり通ることが証明されたからです。

特にここを読む人なら、漫画やイラストを描く人が多いと思いますが、人事ではないですよ。いつ自分がそういう目にあうかわかりません。
盗作なんかしないから大丈夫ですか?でも今回の佐野氏だって、少なくともエンブレムデザインについては盗作ではないですよ。
最近は「似てる=パクり」と思い込むような、おつむの弱い人間も増えていますから、どこでどんな言いがかりをつけられるかわかりません。
上記の「ひぐらしはけいおんの盗作!」って例が冗談じゃなくなってくるわけなんです。

今後もしTPP関係で、著作権侵害が親告罪でなくなった場合、今心配されているのは、日本の二次創作業界ですが、そういう元から黒に近いグレーみたいなものだけではなく、本来真っ白である、一次創作物についても危険になると思います。
海外・・ま、特に米国など訴訟社会ですからね。
日本の「ハンコ絵」と呼ばれる、いわゆる萌え絵など、全部パクりに見えると思いますよ。日本の萌え美少女絵なんて、どれもこれも、少なくともベルギーのあのロゴと、あのエンブレムよりはずっと似ていますからね。萌え絵師100人集めた展覧会を見て、「全部同じ人の作品かと思った」という感想もありますから、詳しくない人にはその程度のことなんです。

そういう詳しくない人が突然「あなたの絵は、私が好きなイラストレーターの○○さんのパクリなので、訴えます」と言ってくることだってあるんです。実際、いきなり訴えられることもあるかもしれません。
もし、訴えられた人が、ある程度知名度がある人ならば、面白がって今回のように、パクり認定して喜ぶ馬鹿どもが必ず湧きます。
そういう人たちは、本当に盗作かどうかなんて、どうでもいいんです。自分より上にいる成功している人間を、引きずり落として笑いたいだけですから、あなたがいくら身の潔白を叫んでも、通用しません。白か黒かはどうでもいいんです。叩ければ。

さらに恐ろしいのは、そういうテロに等しいような「パク認定」を恐れて、クリエイター側が過剰な自粛、萎縮をしてしまうことです。

この記事に書いたように、日本の漫画はもちろん、他の分野も基本は「パクりパクられて」発展してきたものです。もちろんオリジナルの権利も守らなければならないので、著作権保護の法律があるわけです。
その法律の中であれば、(まあたまに変な判例もありますけど)自由であるわけです。二次創作なんか法律違反ですが「黙認」という日本らしい慣例で、非常にオタク文化を盛り上げてきました。

普段叩く側…今回の「勝利者」らしいネット民のみなさんも、日本のアニメや漫画、ゲーム、その他デザイン等のコンテンツを愛している人は多いのではないですか?今回の「勝利」はその発展を差し止めるような出来事なんですよ。

ただでさえ若いクリエイターには極端にパク認定を恐れ、心配ないようなものまで自粛してしまうケースがあります。それより怖いのは出版社など版元が萎縮して過剰に自粛してしまうことです。アニメやゲームファンのネット民はそれを普段あんなに嘆いているではないですか。
でもなぜそういう過剰な自粛や萎縮が起きるかというと、それは「面白がって何でも叩く」人たちが存在するからです。
本来、クリエイター側は叩かれても毅然として、説明責任を果たすべきです。外国人だと叩かれても問題にもせず、けろっとしていますよ。でも日本人には、どうもそれができないようで、「出る杭は打たれたら二度と出ない」状態です。

でも、そういう無知な人や、卑劣な人に、ちゃんと対応していける力がなければ、日本のクリエイターは叩かれるがままに、退場していくしかありません。訴訟社会に慣れておらず、「空気を読んで謙虚」な日本人の美徳が裏目に出る形です。

今回の件で、マスコミには本当に幻滅しましたね。こういう危機感は、本来マスコミがちゃんと報道するべきではないですか?
馬鹿と一緒になって叩いてどうすんだ。
日本は資源に乏しい、人材だけが頼りの社会です。クールジャパンという言葉もほぼ死語になりつつありますが、コンテンツ産業で稼がなければならない国なんです。
その日本のクリエイティヴコンテンツの危機ですよ。マスコミがそれを先導してどうすんですか。

なお、私は別に佐野氏を擁護するつもりはありません。少なくともトートバッグはダメだった。ああいうのが一件でもあるとダメでしょう。
でも、それとこの問題とは別なのです。

国の威信をかけたロゴが、きちんとした法的根拠で判断されることなく、最終的に国内の暴力で排除されてしまった、そういう大変な問題なのです。

--------
佐野氏のロゴがなぜ盗作ではないかについては、ちゃんとした説明をしている方がいましたので、そのURLを記します。
私は正直、ここまでの思考経路はありませんでした。いやこんな理屈練らなくても、ぱっと見て「問題にならないくらい違うデザイン」じゃないの。あれが盗作に見える人って、どんだけ世間で物を見てない人なの??生まれてからロゴなんてほとんど見たことない人なの?と思いましたが・・・。
でもそう感じたこと自体が、一応はデザインをかじったことがある身だったからかもしれません。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/takayukifukatsu/20150907-00049112/

ただ、なぜデザイン業界がきちんと説明責任を果たさなかったは少し想像がつきます。

第一には「説明の必要を感じなかったこと」だと思います。
数年デザインをかじっただけの私でも、「問題にならない」と感じたレベルのことです。何十年もあの世界にいる方々が、「とるに足らないこと」と考えても、何の不思議もありません。
「え?こんだけ違うのに、なに馬鹿なこと言ってんの?説明??いらないよね??」
多分、こういうことだったんだと思います。

第二には「きちんと説明しようとすると素人には理解できない(理解しようと思えない)」ことだと思います。
上記URLにも書いてあるようなことになります。正直、あの記事を読んでもわからない人にはわからないと思います。ただはっきりわかるのは「デザイナーのロゴに対する考え方は、一般人のそれとは違う」ということではないでしょうか。

実は、ロゴというのはグラフィックデザインの中でも一番といっていいほど難しい仕事だと個人的にですが、思っています。
だからこそ、大企業はロゴに億単位のお金をかけます。単純に「見た目かっこいいならいいじゃん」ではないのです。
私も、すみませんが、ここできちんと説明できません。数年かじった程度の自分には到底素人にわかるように説明なんてできません。私にだってわかっているのは「すごく難しいものだ」程度のことです。
まして、全世界全体に、何十年後にまで残るエンブレムとなると、素人どころかそのへんのデザイナーでは理解できない範囲のことが含まれていてもおかしくありません。

それを一般の人に理解できるように説明というのは、ほぼ不可能だと思います。

これは別にデザインが「素人のおまえらにはどうせわからねーんだよ」と大上段に構えていたからというより、どの業界でも素人に説明するのはすごく大変&そもそも説明の必要ないことってありますよね?そういうことだったのだと思います。

http://togetter.com/li/868979

上記のURLより、素人さん(プロも中にいるのか?)のロゴ案が出ていますが・・・。正直、この中でオリンピックエンブレムとしてはもちろん、そもそもロゴとして使える案自体、半分もありません。それくらいは私レベルでもわかります。詳しい解説はURL内でいろいろな人が言っていますので避けますけれど、とりあえずモノクロと縮小のことくらい考えろと思いますね、ホント。あと外国人が見たときどう思うかまったく考えてない人多いな。
そういうレベルでも当然素人とプロの差はありますが、オリンピックエンブレムとなると、もう本当に、多種多様な面からの考慮が必要なんですよ。

とはいえ、あそこまでマスコミが炎上させたなら、さすがに説明は必要だったと思います。

少なくとも、素人判断では不明なところまで考慮しなければならないこと、少なくとも劇場ロゴの盗作の可能性は0であることについては、明確な説明が必要だったでしょう。

なぜ佐野氏本人はもちろん、デザイン業界はそれをしなかったのか・・・したけどマスコミが取り上げなかったのか・・・。

そこは腑に落ちません。
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