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2012.03.16

バクマンの感想

漫画家志望なら気になる作品だと思います。


 


こういう漫画家志望者を主人公にした長編を読むのは子供のころ「まんが道」を読んで以来ですね。
「まんが道」もとても面白いのですが、なにせ時代背景が違いすぎます。藤子不二雄(まだ分かれる前)先生の自叙伝ですからね。なんだかんだで50年以上昔の話になるかと・・・。
もちろん志望者にとって普遍的なことがらも多く描かれていますし、何より面白いのでおすすめですが。


さてバクマンです。
※私はアニメしか見ていませんので、2013/2月時点まで放映された内容のみで話をしています。


ネタバレ的な内容も多少含まれるかもしれませんので、今から読んでみようと思う方はご注意ください。


 


 


読めばすぐわかることですがモデルになってるのは掲載誌である少年ジャンプ、集英社ですね。
昔、ジャンプで担当がついている人と話をしたことがありますが、あそこはとにかく新人をアシスタントとして連載作家の下に入れてしまうシステムのようです。今でもそうなのか不明ですが、実際活躍している先生の経歴などを見ると、ほぼ連載陣のアシスタント経験があるので、多分今も変わらないのでしょう。


アニメのみしか見ていませんが、今のところ割りと現実的な設定・展開だと思います。どこまでノンフィクションなのかわからないですが、私が経験している限りでも(私は集英社ではないです)似たようなものです。
実際、担当がついたりデビューしているレベルの志望者・新人なら、「まあ漫画だし」とは思いつつも、「こんなん現実にあるかボケ」と笑い飛ばすほどのレベルでもないと思います。



なので、漫画家目指してみたいけど、漫画業界まったくわからない……という人が参考にしても、まあいいんじゃないかなと思います。ただまあジャンプはいろいろ特殊でもあるので、どこでもああだとは思わない方がいいと思います。


で、もちろん漫画なので、多分にご都合主義だったり美化されている部分はあります。
私は集英社のお世話になったこともなければ、少年漫画誌を体験したこともないので、そもそも現実どうなのかよく知らないのですが・・・。


 


物語としては中学生コンビが初投稿からとんとん拍子に成長してうまくゆく、という漫画らしいサクセスストーリーになっています。
しかし、漫画ながら一応抑えているなというのは、主人公の二人が決して凡才ではないこと。


絵を担当する主人公、真城君はまず、仲の良かった叔父がアニメ化もされた連載漫画家だったというバックグラウンドがあります。
さらには、小学生から抜群に絵が上手で、大臣の名前入りの表彰状をもらうほど。
漫画絵にこそ慣れていないものの、もともと相当の画力の持ち主という設定です。


いざ漫画を描くと決めたらすぐに、中学生にして自分の絵の欠点を見抜き漫画に合わせて調整のうえ、完成原稿を仕上げる分析力・実行力。入院・手術が必要になってもペンを離さない根性。
天才とまでいかなくとも、漫画家に必要なすべての資質において非凡なのは間違いありません。


 


話を担当する相棒、高木君も漫画に専念していてもトップクラスを保つほどの頭脳の持ち主(勉強で彼に勝てなかった少女は後に東大に入学しています)、小説を書けば高校生ながら採用されるほど物語を作る能力にも長けている。こちらも相当に能力に恵まれた人物です。


私もブログに「一部の特殊な人しかなれない」としているように、彼らもまた普通の人ではなく、「特殊な人」と言えるでしょう


主人公となる漫画家をコンビにした主な理由は、漫画という、作業が地味で絵やエピソードにしづらいジャンルのため、人間関係をメインに据えてドラマをつくれる設定にしないとどうしようもない、というあたりから、主人公と蜜な関係で、切磋琢磨しあって成長できるような人間を置いたものと思います。


が、中学生からいきなり目指してどんどん成功してゆくという展開にあたり、一人の人間にそこまで才能と運がある、というのも説得力に欠けますし、そこまで「特殊な人」にしてしまうと、読者の感覚からかなりかけ離れてしまい、主人公に感情移入できなくなります。


しかし「絵が超絶上手で根性がある」「頭がよくて話なら考えられる」くらいなら、ぎりぎり現実味のある設定でしょう。
そういう意味でも、コンビ設定は良いと思います。


 


なお、主人公たちのライバルとして、「漫画の申し子のような天才肌」と、「いきなり目指し出して成功してしまう異色の天才」が出てきます。
読者からちょっとかけ離れた「特殊すぎる人」はこのようにライバルや友人に置くのが妥当だと思います。


 


読者がぎりぎり感情移入できるレベルで、かつ成功してもご都合主義にならない程度の才能と運の持ち主が、「友情」と「努力」によって「勝利」を手にしてゆくというジャンプの王道を行く構成になっています。


個人的には、もう少し二人の個性を出して、二人の関係に関するドラマも扱ったほうが、せっかくコンビ設定ですし、面白くなるような気もするのですが、今のところ順位を競う「バトル」の方に重点がおかれており、コンビ間についてはあまり描写がないという印象です。ま、今後どうなるのかわからないですけど。



感想はだいたいざっと以下のとおり!


 


●編集部及び編集部員の質が妙に高い。


いや、本当に集英社はあんな感じなのかもしれませんが・・・。


でも、編集部が全部あんな感じで、ああいう熱心で新人の人生まで考えてくれる編集部員が当たり前とは思わない方がいいです(笑)。
あれは原作者の「編集にはかくあってほしい」という理想が具現化したような・・・(笑)。


新人に絶対に必要な運としては「担当運」があります。
作中で真城くんが「アタリハズレがある」ときっぱり言っているとおりです。
正直、最初についてもらう担当さんによって、その漫画家の運命はかなり変わると思います。


服部さんみたいな担当さんに最初についてもらえたらいいですよねえ。
まあ良い担当さんを引き寄せるのも新人の実力のうちということで。


担当さんの好みによって作風が左右されたり、作家が気をもむ様子なんかはリアルでしたね。
ああいうことは実際、相当にあります。
主人公たちが自分の望む作品を掲載したい一心で、別の作品を読みきりとして出すシーンがありますが、実は私も似たようなことをやって、自分の望む雑誌に移籍した経験があります。(担当さんに無断とかではないです。一応ちゃんと相談のうえ)
他にもそういうことをした新人の話は聞きます。やり方によっては担当にケンカをうるような形になってしまうので、決して推奨はできませんが……。



●志望者の成功率が妙に高い。


まあ、これは漫画なのでしゃーない。
また、ジャンプは本当に有望な新人しか残っていかないので、ある程度まで残った新人が成功率が高いのは当然かもしれませんが。
また、質の高い志望者は同レベル同士でどうしても固まってゆくので、ある仲間内の成功率が高いのもある意味ありえることかとは思います。
逆に言えば、ダメレベルの志望者はダメレベル同士で傷のなめあいになりかねないということです。友人は大事ですが、高いレベルを目指すなら、自分も高いレベルの中に身をおくことは意識したほうがいいと思います。
私はそういう意味でも漫画の専門学校は薦めないんですよね・・・。


それにしても福田組の団結はすごいですね。新人漫画家同士はお互いにアシをしあったりして仲良くはなるものですが、あそこまではそうはないんじゃないかな・・・。私が知らないだけであるんですかね?



●主人公たちの漫画が…


これも仕方ないんですが、正直、設定とかストーリー展開を見る限り、そこまで面白いと思えないっていうか(笑)。
絵は、小畑先生ですので当然レベル高いのですが。
まあ、ジャンプで実際に連載されている作品と比べちゃいけない…。
ジャンプを目指す人は、あのレベルでいいとは思わないようにね(笑)。
しかし初持込のあの漫画は、まるで1960〜70年代の漫画のようでいろんな意味でびっくり。
あの作品は、多分今だと少年誌だとまず無理、青年誌だとよくて選外佳作か選外Aランクくらいのレベルですね。


「ガラスの仮面」(そういやバクマンでアシの女の子がスゴイと思う漫画としてあげてましたね)という少女漫画があるのですが、演劇をテーマにした漫画のため、作中劇があるんですね。
その作中劇も、かなりのものが作者オリジナルなのですが、これが全部面白いんです。どれも独立した漫画として読みたいほどです。それも1つや2つじゃない。
作者である美内先生が、ある漫画新人賞で「最近の新人の漫画はストーリー性が薄い気がする」と苦言を呈しておられましたが、非常に説得力がありますね。
って話ズレましたけど。



●順位や票数の話に偏りすぎ


これも、ジャンプである以上しょうがないと思いますが・・・・。
ジャンルが漫画であっても「バトル」をしないといけないわけです。
漫画家がわかりやすくバトルをするのならば、どうしても順位や票数での勝負になりますからね。


しかし、漫画家志望の立場から見るなら、もう少し漫画を描く上での葛藤や工夫、過程にスポットをあててほしいような気もするのですが・・・・。
せっかくの原作・作画のコンビ設定も、それほど活かされている気がしないし・・・。


才能ある若い漫画家の目標が「順位」と「アニメ化」だけというのは、クリエイターとしてあまりに寂しいです。
それじゃあ、ただの点取りマシーンじゃないですか。


漫画家のなり方のところに書いたように、漫画をビジネスとして考えられることはとても重要です。
自分の表現だけにこだわって、客観的評価を気にしないのでは仕事になりません。
順位やメディアミックスを意識できなければ、仕事として継続が難しくなります。


しかし、いくらなんでも、あんなに順位のことしか考えていないってこたないだろう・・・。いや、考えてるの・・・?そういうもんなの・・・?


ライバル兼仲間である青木さんは多少自分の表現や描きたいものに対するこだわりや葛藤が見えるのですが、他の作家には驚くほどそれがありません。
あるのかもしれませんが、作中ではほとんど見えません。(現時点のアニメでは、ですが)


高木君にしても真城君にしても、あるいは新妻君、福田君などにしても、自分の漫画や自分のキャラに対する愛情がほとんど伝わってきません。(愛情表現としては、この作品なら一位がとれるとか、このキャラなら人気がとれるとか、アニメ化できるとか、そういうものばかり・・・・)



ずっと見ていると、漫画は彼らが一位をとるためのただの道具にしか過ぎないように思えてきます。


正直、漫画家志望としては悲しくなります。


そもそも、あの二人が漫画家を目指しだした動機からして、「漫画が好きだから」という動機はあまり感じられません。
高木君は自分で言ったとおり、「ただのサラリーマンで人生終わりたくない」、真城君は(そもそも作画家なので、絵での表現に限られるのですが)亡くなった叔父の夢を叶えたいというのが大きな動機になっています。


漫画が好きだとか、漫画で表現する喜びだとか、漫画を通して読者に、世に、何を伝えていきたいのかとか、そういう客観的評価以前の、漫画家としての自分の内部の意志や喜び、こだわりが、作品上からほとんど感じられないのです。


ある意味、そういうこだわりを一番感じたのは、序盤でライバル?として出てくる妙なビジュアル系アーティストです。(名前忘れました)。彼は逆に、自分の個性にこだわりすぎるあまり完全に読者を置いてきぼりにして、自滅してしまいましたが。


ああいうキャラを自滅するライバルキャラに設定する、ってことはジャンプは、個性重視の作家は不要なんですかね?自分のこだわりを貫こうとするような作家より、とにかく順位を追い求めるような作家が好ましいんでしょうか。


ま、商売になるのは当然後者ですけど。


 


ちなみに冒頭に書いた「まんが道」では、主人公の二人が、漫画雑誌の賞金稼ぎにはまってしまい、賞金稼ぎが目的のようになってしまうというエピソードがあります。


最初は、純粋に自分の漫画が売れた、仕事になったという感動をかみしめていた二人も、それが普通になると、だんだん賞金の額だけを気にするようになってゆき、より賞金がもらえるような漫画を描くようになります。
しかし、二人が尊敬する手塚治虫先生の新作を読んで、二人は改めて純粋な漫画に対する愛情を思い出すというものです。
もともと、この二人が漫画家を目指したのは手塚先生の作品にあこがれてのことですので。
なぜ漫画を描きたいと思ったか、なぜ漫画を描くのか……。二人が初心に戻ったエピソードでした。


 


「まんが道」は昔、まだ漫画家という職業が今ほど定着していなかった時代に、いかにして漫画家として生きていくかというところにも大きくスポットをあてて、本当に「道」という感じの作品でしたが、バクマンはジャンプという完成したシステムの中でいかに結果を出し続けていくかという話になっていますね。


野球に例えると、まんが道は自由に野球をやっている感じ、バクマンはバッティングセンターで、機械的に繰り出される玉を、いかにより高く打ち続けるかだけを考えているような感じがします。


別に、バクマンがつまらないというわけではないのですが、表面上の競争だけに焦点をあててしまっている以上、話の深みは薄いという印象です。
ジャンプなんで仕方ないかもしれません。変に深みとか需要ないのかもね。


もしくは今からそこらへんに切り込んでゆく予定なんでしょうかね??


 


それにしても、ジャンプってあそこまでアンケート順位至上主義なんでしょうかねえ・・・。本当に・・・・?


誇張されてるのか、本当にあんな感じなのか、どちらとも思えてしまうあたりがジャンプですね。


ちなみに私のいた雑誌では作家はアンケート結果は教えてもらえませんでした。聞けば答えてくれたかもしれませんが。
私は大分後になってから一度だけ「あの作品はここしばらくの新人ではすごくアンケートが良かったんだ」と教えてもらったことがあります。そういうことはすぐに言っておくれよ・・・。


 


●作家の柔軟性・分析力が高い


これも漫画なのでといってしまえばそこまでですが。


あちこちに私も書いていますように、多くの新人漫画家は自分の作品を客観的に見れません。たいていは非常に過大評価しています。私ももちろん経験あります、というか今も経験中です。


なので、未熟な漫画家志望ほど、したり顔で他の新人の作品をこきおろします。たいていは投稿もしたことないようなレベルの人ですけどね、そういうことをするのは。
まだ読者側なんです、意識が。その読者側の意識を自分に対しても向けられるといいのですが、なぜかそれはできない。


でもバクマンに出てくる作家たちは主人公はもちろん、ライバルも仲間も、かなり自分や人の作品を公平に客観的に評価でき、さらに長所短所の分析力に優れている。
これはなかなか稀有なことです。


人の作品の長所を、自分の作品の短所を、素直に認められるのは、作家にとってとても有利なことです。
また、主人公二人は、人の話を聞く力も優れている。
人の話を素直に受け入れられる新人は伸びます。


私は人の話を聞けないんです。本人は一生懸命聞いているつもりなんですが、聞いていても、無意識化で自分に要不要な情報を、勝手に自分で選別してしまい、結果、必要な情報も退けてしまっているようです。
これは漫画にかかわらず、人生全般で本当に損をしますので、みなさんは人の話をちゃんと、本当に、聞くようにこころがけてください・・・・・。


 


 



さて、なんか批評めいたことばかり書きましたけど、漫画家志望なら読んでみるといいと思います。
漫画としても面白いですしね。小畑先生の絵はきれいだし。


って、私もアニメしか見てないんですが、今度原作も買ってみようと思っています。

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